170年を超える歴史をもつハイジュエラー、カルティエ(Cartier)の展覧会を観てきました。
1860年代から2000年代の作品で構成される3,000点超の「カルティエ コレクション」は、世界有数の美術館から注目されており、これまでにパリ、ニューヨーク、ロンドン、モスクワなどで30回以上の展覧会を開催しています。
日本では1995年、2004年、2009年(このブログでご紹介しました)に次ぐ4回目の開催となる本展では、「時間」をテーマに、1970年以降の現代作品にフォーカス。展示作品300点の半数ほどが本展でしか観られない個人所蔵品で、またとない機会になっています。

20世紀初頭、ハイジュエリーに使われることのなかったプラチナを最初に用いたカルティエは、伝統的に使われてきた金銀や貴石に、化石化した木やカワセミの羽根、バラの花びらや麦わらなどジュエリーとは無縁の素材を積極的に取り入れ、卓越した技術で新しい装飾表現を常に追求。
ブランドの象徴としてタイムレスに存在するパンテールから、日本や中国、中東の文化からインスピレーションを得たオリエンタルなデザイン、釘やコイルなどの工業的なモチーフまで、自由な発想と好奇心から創りだされたジュエリーが並びます。

広い空間で小さな作品をいかに見せるか、観覧者の視線の移ろいに苦労したという会場デザインにも注目です。手がけたのは現代美術家の杉本博司氏と、建築家の榊田倫之氏が主宰する新素材研究所。

トルソーや展示台は、展示するジュエリーのカタチに合わせてひとつひとつデザインし、仏師が屋久杉や神代ケヤキをノミで彫って制作。長い年月を経て生み出された自然の木目と、カルティエの歴史が美しく重なり合います。

日本の古美術に造詣の深い杉本氏ならではの、地蔵菩薩像の掛軸や蓮弁の台座とジュエリーをコラボレーションさせた展示もあり、見どころ満載の展覧会です。
カルティエ、時の結晶
https://cartier2019.exhn.jp/
2019年12月16日(月)まで
[店長]