あれから10年。ドナとソフィの母娘が帰ってきました。前作と同じく南欧の美しい島を舞台にABBAの楽曲をふんだんに使った陽気なミュージカルが展開します。
物語の時代は前作から5年ほど経った2005年頃。メリル・ストリープ(Meryl Streep)目当てで観に行くと、出だしでびっくりしてしまうのですが、既にドナは亡くなっています。ホテルはアマンダ・セイフライド(Amanda Seyfried)演じるソフィーが継いでいて、今は改装オープンに向けてパーティの準備中です。
ソフィーの3人の父親のうちピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)演じるサムは近くに住んでいますが、コリン・ファース(Colin Firth)演じるハリーは日本で商談中、ステラン・スカルスガルド(Stellan Skarsgård)演じるビルはスウェーデンで授賞式があってパーティに出席できません。その上、ニューヨークにいる夫のスカイまで予定が変わって帰れそうにありません。
ソフィーを励まそうと早々に島にやってきたのはドナと一緒に歌っていたダイナモスの仲間たち、ジュリー・ウォルターズ(Julie Walters)演じるロージーと、クリスティーン・バランスキー(Christine Baranski)演じるターニャだけですが、その後、嵐がやってきてパーティが開催できるかどうかも怪しくなってきます。
こう書くと、ソフィーとサム、ロージーとターニャしか出てこないのかと思われそうですが、ちゃんと最後は全員勢ぞろいしますし、ドナの母親ルビーという無茶苦茶な役回り(演者の実年齢は3つしか違いません)でシェール(Cher)まで登場しますのでご心配なく。
ついでに書くと、ホテルのマネージャー、フェルナンド・シエンフエゴスという謎めいた男の役でアンディ・ガルシア(Andy Garcia)も出ていて、たいへん豪華なキャスティングになっています。謎めいた男といっても姓のCienfuegos(キューバにある地名です)を直訳すると“100の炎”ですから、すぐにどんなキャラクターかわかってしまいそうですが・・・。名前の方はご想像の通りABBAの“悲しきフェルナンド”です。
メリル・ストリープが出ていると言ってもその出演場面はほんの少し。ほとんどの部分で、ドナの若かりし頃を演じたリリー・ジェームズ(Lily James)中心に物語が展開します。「ベイビー・ドライバー」で注目を集め、「ウィンストン・チャーチル」で秘書のレイトン嬢を演じた最近売り出し中の女優さんですね。
本作は現代と、ドナがオックスフォード大学ニュースクールを卒業した1979年頃の2つの時代を並行して描く作りになっていて、いろいろと思い悩む現代のソフィーと、奔放に行き抜いていく同じ年頃のドナを対照的に見せていきます。
ですから、ドナだけでなく、ロージーとターニャも、サム、ハリー、ビルもダブルキャストになっていて、それぞれアレクサ・デイヴィーズ(Alexa Davies)とジェシカ・キーナン・ウィン(Jessica Keenan Wynn)、ジェレミー・アーヴァイン(Jeremy Irvine)、ヒュー・スキナー(Hugh Skinner)、ジョシュ・ディラン(Josh Dylan)という若手俳優が演じています。
もちろんそこで描かれるのは、ソフィーの3人の父親とドナの出会い。リリー・ジェームズ演じるドナがとても活き活きしていて、もう1人の主役であるソフィが霞んでしまうほど魅力的です。
3人の男を次々と乗り換えていくわけですから、冷静に考えるとひどい女ですが、 芯の強そうな表情といい、豪快な笑い方といい、彼らを虜にしてしまうのも納得させられます。ほぼ彼女のための映画と言って良いでしょう。
最初に登場する卒業式のシーンでぐっと惹きつけられ、ハリーと出会うパリのシーンで一気に魅了されます。ちなみにハリーと歌って踊る“恋のウォータールー”の場面のピアニストはABBAのベニー・アンダーソンだそう。このダンスでリリー・ジェームズが爪先を骨折したと報道されていましたが、ミュージカル映画の真骨頂ともいえるような熱演でした。後半に出てくる桟橋の“ダンシング・クィーン”と並んで本作最大の見せ場だと思います。
この映画は東京国際フォーラムで開催されたジャパンプレミアで観たのですが、その際の演し物としてLittle Glee Monsterというボーカルグループのパフォーマンスがありました。よくあるアイドルグループかと思ったらとても歌が上手で、彼女たちが歌う“ダンシング・クィーン”に会場4000人が喝采を送っていました。本作のジャパン・アンバサダーを務めているそうです。
その他、ゲストとして吉本興業の横澤夏子さんが来ていて、私はわかりませんでしたが、どこかに出演していたそうです。おそらくコリン・ファース演じるハリーが日本の会議室で契約書の読み合わせをする場面で、交渉相手として「修道士は沈黙する」で日本の大臣を演じていた伊川東吾(Togo Igawa)と「エベレスト 3D」で難波康子さんを演じていた森尚子(Naoko Mori)も登場しますので、ファンの方は探してみてください。
ということで、何も考えずに気持ちを盛り上げたいときにお勧めの1本です。ロケ地となったクロアチアのヴィス島も素晴らしくて、一度行ってみたいと思いながら観ていました。
公式サイト
マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー(Mamma Mia! Here We Go Again)
[仕入れ担当]