写真展「奈良原一高 王国」

昨年11月から東京国立近代美術館で開催されている写真展です。
たまたま映画館で見かけたチラシの写真(下)がとても印象的で、ずっと行きたいと思っていたのですが、ようやく観ることができました。

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奈良原一高氏は、戦後に登場した世代を代表する写真家。1958年に発表した「王国」が日本写真批評家協会賞新人賞を受賞しています。本写真展は、2010年に株式会社ニコンより寄贈を受けたプリント全87点を、発表当時出版された写真集とほぼ同じ構成で紹介しているものです。

北海道のトラピスト修道院で撮った「沈黙の園」と、和歌山の女性刑務所で撮った「壁の中」の2部構成になっています。

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修道院と刑務所という対照的な空間でありながら、どちらも外部から隔絶された世界という点は同じです。修道院では男性修道士たちが神と、刑務所では女性受刑者たちが自分と向かい合う様子が映し出されています。

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作品に自らの内面を投影させたという奈良原氏、当時の日本の写真界では新しいものだったそう。ご本人は、そのような手法を「パーソナル・ドキュメント」と称しています。

修道院を撮影した作品は、日本にもウンベルト・エーコの「薔薇の名前」を思わせる、こんなところがあるんだという驚きで見入ってしまいました。

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女性刑務所の写真は、ほんのわずかな光で捉えた受刑者たちの横顔や背中に孤独や空虚さを感じつつも、整えられた髪やファッション誌に目を通す様子には希望を感じます。

修道院と刑務所。色のない世界を自然光とのコントラストで映し出した陰影の世界がずしっと心に残る写真展です。

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また、本展と連動して、所蔵作品展「MOMATコレクション」でも奈良原氏のデビュー作「人間の土地」が展示されています。3階の「緑なき島 – 軍艦島」14点と「火の山の麓 – 黒神村」8点は必見です。

軍艦島というと、2年前の最新「007」シリーズのロケ地として登場したことが記憶に新しい場所ですが、本作品は人が暮らしていた頃の様子を捉えています。
黒神村は鹿児島県桜島にあるのですが、子どもの頃に訪れたとき、火山灰に埋まっている鳥居をみたことを思い出しました。

3月1日まで開催されていますので、ぜひご覧になってみてください。

奈良原一高 王国
http://www.momat.go.jp/Honkan/naraharaikko/
会期 2015年3月1日(日)まで
会場 東京国立近代美術館
休館日 月曜日(1/12は開館、翌1/13は休館)
開館時間 10:00〜17:00(金曜日は20:00まで)入館は閉館の30分前まで

[仕入れ担当]