監督がスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)で音楽がジョン・ウィリアムズ(John Williams)、これぞハリウッド映画の王道といった映画です。残念ながらアカデミー賞は獲れませんでしたが、普遍性の高い感動的ドラマを、技術力と資本力を結集して素晴らしい映像に仕立て上げています。
原作は、1982年に出版されたマイケル・モーパーゴの子ども向けの小説。英国デボンシャー生まれの馬・ジョーイが、第一次大戦で軍馬としてフランスに渡り、戦火をくぐりぬけて「奇跡の馬」と呼ばれるようになるまでの物語です。戦争の悲惨さを下敷きに、ジョーイと触れ合う人々の国境を超えた動物を愛する心を描いていきます。
デボンシャー(Devon)といえば、クロテッドクリーム(Clotted cream)ですが、一昔前、日本ではなかなか手に入らなくて、某・英国風ティールームのスコーンにも、ゆるゆるのホイップクリームが添えられていたものでした。今では近所のスーパーでも買えますので、ずいぶん良い時代になったものです。
話が逸れましたが、デボンシャー生まれのジョーイのお話です。この映画のテーマは、馬と人間の触れ合いですので、馬が驚異的に素晴らしい演技(?)を見せます。成育シーンから戦闘シーンまでさまざまなシーンで、全14頭の馬がジョーイを演じたそうですが、一体どうやって撮ったのだろう?と思わせるシーンが随所に出てきます。
また、英国のお話ですので、英国人俳優がたくさん出演しています。ジョーイを育てる少年を演じるジェレミー・アーバイン(Jeremy Irvine)は新人だそうですが、その父親を「マイ・ネーム・イズ・ジョー」のピーター・マラン(Peter Mullan)、母親を「奇跡の海」のエミリー・ワトソン(Emily Watson)と、ベテランの実力派が脇を固めます。
ニコルズ大尉を演じるトム・ヒドルストン(Tom Hiddleston)は、ウディ・アレンの話題作「ミッドナイト・イン・パリ」にフィッツジェラルド役で出ているそうですし、スチュワート少佐役のベネディクト・カンバーバッチ (Benedict Cumberbatch)はゲイリー・オールドマン主演の「裏切りのサーカス」に出ている人。あまり目立ちませんが、売り出し中の英国人俳優もけっこう出ています。
フランスでジョーイを匿う農夫役、ニエル・アレストリュプ(Niels Arestrup)は、映画「サラの鍵」「預言者」と、最近の話題作に立て続けに出演しているフランスの名優。この「戦火の馬」でも重要な役で、とても味わい深い、泣かせる演技を見せています。
残念なのは、登場人物全員が英語を喋るせいで、登場人物のバックグラウンドを瞬時に判断できないところ。ハリウッド映画なので字幕というわけにはいかないのでしょうが、ドイツ兵同士が英語で話していたり、ニエル・アレストリュプが孫娘と英語で語ったりするシーンは、けっこう違和感あります。
原作が子ども向けの小説ですので、シンプル過ぎて、ちょっと物足りなく感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、春休みにお子さんとご覧になるには最適な映画だと思います。
[仕入れ担当]