渋谷 Bunkamura の再オープンを記念して上映されている作品のひとつ。とってもゴージャスなイタリア映画です。
ミラノの工場経営者一族の豪邸が舞台なのですが、それに華を添えるのが、ジル・サンダー(Jil Sander)のクリエイティブ・ディレクター、ラフ・シモンズ(Raf Simons)のデザインによる数々の衣装。
ダミアーニの宝飾品やエルメスのバッグなど、主演のティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)が身に付けるアクセサリーにも大注目です。
ちなみに音楽はジョン・アダムス(John Adams)ですし、タイトルのレタリングはルカ・バルセロナ(Luca Barcellona)と、映画のすみずみまで凝ってます。
物語は老オーナーのバースディパーティで幕開け。その席上で引退を宣言し、息子と孫への事業承継を告げます。息子のタンクレディはすでに事業の中核にいますが、孫のエドアルドはいまだスポーツに熱中しているお坊ちゃま。
ティルダ・スウィントン演じる主人公のエンマは、タンクレディの妻で、エドアルドの母親。元々はロシア人で、タンクレディと出会ってイタリアに来ましたが、息子のエドアルドにロシア語を教え、今でも二人の会話ではロシア語を使ったり、イタリアでの生活に完全に馴染めないでいる様子が窺えます。また、エドアルドはエンマが作るロシア風の魚のスープが大好物で、イタリア人らしい母子関係(マンマが大好き!)も垣間見えます。
一族のビジネスは、時代の趨勢か、インド系米国人からM&Aの提案を受けるなど、変革の時を迎えています。エドアルドの友人のアントニオは、街から離れた山荘のような屋敷で、周囲で採れる野菜を使ったリストランテを開業する計画をもっていて、エドアルドはそれに参画しようとしています。
エンマはそんな家族から疎外感を感じており、妻であり母であるだけの生活から飛び出そうと、原題のIo sono l’amore(≒I Am Love)に繋がる行動に出るというのがストーリー。
ジョン・アダムスの音楽もあいまって、オペラを見ているような印象の映画です。次作「少年は残酷な弓を射る(We Need to Talk About Kevin)」も好評なティルダ・スウィントンの熱演も見どころですが、どちらかというとリラックスして優雅に観賞したい映画だと思います。今年の見納めの映画として、または新年にゆったりと観る映画としていかがでしょうか。
[仕入れ担当]