ルーシー・リー(Lucie Rie)の回顧展を見に、益子まで行ってきました。
6月後半まで六本木の国立新美術館で開催されていたのですが、タイミングが合わず、見逃してしまっていた展覧会です。その後、人から評判を聞くたびに気になっていたのですが、ようやく見ることができました。
栃木県の益子は、いわずと知れた陶芸の町。街道沿いには窯元の看板が並び、無数の直売所が軒を連ねていますが、その中心部の小高い丘に益子陶芸美術館があります。
美術館は、こじんまりした佇まいの建物ですが、それをとりまくように旧濱田庄司邸や陶芸工房、笹島喜平の版画館が点在しています。陶芸工房の傍らには大きな登り窯もあります。
ルーシー・リーの陶器ですが、「都市に生きた陶芸家」と題されている通り、とても都会的で繊細なものです。また彼女自身の魅力、老人になっても上品で可愛らしい感じが、その作風によく表れていると思います。
もちろん陶器そのものも、質感といい発色といい、写真で見ていた以上に素晴らしいものでした。特に後期の作品の、美しいフォルムと掻き落としの線、華やかな色彩には、ぐっと引き込まれるものがあります。
英国に渡り、長期にわたる試行錯誤の期間を経た人ですから、造形面では英国的な影響が強いのかも知れませんが、ウィーン出身のルーシー・リーには、どこかクリムトと通じる色彩感覚があるように思いました。
面白かったのは、戦時中に生活のために製作していたという陶製のボタン。デザイナーの三宅一生氏は、彼女のボタンのコレクターだそうですが、さまざまなデザインで製作されており、思わず蒐集したくなるような魅力があります。
ボタンと一緒に、チョーカーやブレスレットなど、彼女が製作したジュエリーも少し展示されていたのですが、陶磁器を使ったジュエリーでも、ヘレナ・ローナー(Helena Rohner)とはずいぶん違うアプローチだなぁと興味深く拝見しました。
ルーシー・リーの回顧展は、益子の後、熱海、大阪、三重、山口の萩と巡回します。東京で見逃してしまった方も、まだ見るチャンスはあります。
ルーシー・リー展 – ウィーン、ロンドン、都市に生きた陶芸家
Lucie Rie – A Retrospective
http://www.lucie-rie.jp/
[仕入れ担当]