マドリード市内のギャラリーや美術館が参加するフォト・エスパーニャ(PHOTO ESPAÑA)というイベントがあります。その10周年記念として2007年に開催された「マン・レイ展」が、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、ポルトガルを巡回して、いよいよ東京にやってきました。
皮切りのICO財団美術館(Fundación ICO)では350点の展示だったそうですが、日本展だけに出品されている約70点の作品を含め、約400点の見ごたえのある展覧会になっています。ニューヨーク(1890-1921)、パリ(1921-1940)、ロサンゼルス(1940-1951)、パリ(1951-1976)の4つの時代に分けて展示されており、マン・レイの生涯を網羅的に見ることができます。
彼のアート性の高いポートレートやファッション写真は何度見ても飽きません。以前、マドリードの美術館で購入したマン・レイのポストカードは両腕に隙間なくバングルを身に着けた女性の写真でした。VOGUE誌やHarper’s BAZAAR誌に掲載された写真にはアクセサリーを巧みにまとった女性が写っていて「このくらい身に着けなきゃ」と刺激になります。
彼の創作活動はオリジナル作品を写真で複製したことがベースになっていますが、それぞれのモチーフが異なる表現方法で何度も登場するのも特徴です。たとえば初期のニューヨーク時代に作られた螺旋状のランプシェードは、パリ時代の写真でカトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)が着けているイヤリングでも表現されています。
この展示会の目玉の一つであるカラー写真は、赤い色が印象的でした。「花」や「海辺のジュリエット」ほか14点のカラー写真は、彼自身が額装したもので、パリのアトリエに飾られていたフォトフレームのまま展示されています。その様子は、特別に展示されている篠山紀信撮影のマン・レイのアトリエ写真でも伺い知ることができます。
写真、絵画、彫刻、映画作品など盛り沢山で、とても満足度の高い展覧会でしたが、じっくりご覧になるには時間が必要です。作品保護のために冷房を強めに効かせていて、ノースリーブで訪れたことを後悔しました。ストールなどをご持参になることをお勧めします。
マン・レイ展 知られざる創作の秘密
(Man Ray – Unconcerned But Not Indifferent)
国立新美術館
2010年9月13日(月)まで 火曜休館
10:00〜18:00・金曜は20:00まで
http://man-ray.com/
http://www.nact.jp/exhibition_special/2010/manray/index.html
[店長]