新宿で開催中のラテンビート映画祭で、ハビエル・フェセル(Javier Fesser Pérez de Petinto)監督の「カミーノ(Camino)」を観てきました。
2008年ゴヤ賞(Premios Goya)で監督賞、作品賞、脚本賞、主演女優賞、新人女優賞、助演男優賞を独占した話題作です。ちなみに、この時の助演女優賞は「それでも恋するバルセロナ(Vicky Cristina Barcelona)」のペネロペ・クルス(Penélope Cruz)、主演男優賞は「チェ 28歳の革命(Che, el argentino)」のベニチオ・デル・トロ(Benicio del Toro)。
なんといっても素晴らしいのはカミーノを演じたネレア・カマチョ(Nerea Camacho)です。病床に伏せ、表情だけの演技が続くのですが、11歳か12歳で(彼女は1996年生まれ)これだけの演技ができるとは、ただただびっくり。新人女優賞を獲得するだけのことはあります。病気になる前、シャキーラ(Elena Cáncerをご愛用)のEstoy Aquíで踊るところなんかとっても可愛くて、将来が楽しみな女優さんです。お母さん役のカルメ・エリアス(Carme Elías)も主演女優賞に値する好演でしたし、お父さん役のマリアノ・ベナンシオ(Mariano Venancio)や、友人ベコーニャ役のクラウディア・オテロ(Claudia Otero)も良かったと思いますが、やっぱり、これはネレア・カマチョの映画といえます。
ストーリーは、11歳の女の子が不治の病に侵され、熱心なオプス・デイ信者の家族や関係者に囲まれて短い生涯を終えるというもの。ベースになっているのは、Alexia Gonzalez-Barrosという、1985年に14歳で亡くなった女の子のお話だそうです。彼女を紹介したサイトによると、信仰が篤く、とても「幸せな死」を迎えたということで、1993年に列聖手続きが開始されています。
終映後のQ&Aで、監督は「テーマは愛」と言い、Alexiaの「幸せな死」には、宗教的な充実も、少女らしい初恋も、いろいろな要素があったのではないかと思い、映画の着想を得たと言っていましたが、この「愛」という言葉がなかなか厄介で、「神の愛こそ唯一の愛」という信心深い人もいるでしょうし、私のように宗教と無縁な暮らしをしていると「家族愛も隣人愛もみんな愛」という感覚でしょうし、人によって受けとめ方はいろいろだろうな、と思いながらQ&Aを聞いていました。
こう書くと、陰鬱な映画のようですが、ミッシェル・ゴンドリーっぽいファンタジックな映像を織り込んだ明るく美しい映画です。また各所に伏線が張り巡らされていて、たとえば、カミーノの初恋の相手クコの本名がヘスス(Jesús)だったりと、仕掛けやディテールの楽しい映画でもあります。随所で登場する先導役のネズミと劇中劇のシンデレラ、クコの実家のケーキ屋さんの店名、お父さんがプレゼントする小さな金庫(CGS: Caja de Guardar Secretos) 、赤いドレスといったあたりに注目してご覧になることをお勧めします。
[仕入れ担当]