映画「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち(Stuntwomen: The Untold Hollywood Story)」

stuntwomen 先週に続いてドキュメンタリー映画のご紹介です。スタントというとアクション映画、アクション映画というとブロックバスター系ですが、どちらかというとスタント技術よりも“女性と仕事”にフォーカスした作品ですので、私のようにその手の映画をあまり観ていない方でも十分に楽しめると思います。

スタントの現役世代が大先輩にインタビューする形式で進みます。

その昔は男性スタントが女装して挑んでいた危険なシーンを女性が演じるようになるまでの経緯と当事者たちの努力が紹介されていくのですが、かなり昔から女性スタントが活躍していたこと、彼女たちがまさに体をはって演じていたことに驚かされます。

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1976年からTV放映されたオリジナル版「チャーリーズ・エンジェル」でケイト・ジャクソンやタニア・ロバーツのスタントダブルを務めたジーニー・エッパー(Jeannie Epper)は1941年生まれ。「ワンダーウーマン」のジュール・アン・ジョンソン(Julie Ann Johnson)は1939年生まれで、「ブルース・ブラザース」などの仕事をした黒人女性ジェイディ・デイビッド(Jadie David)もデビューが1972年だそうですので、この方々が女性スタントの活躍の場を拡げていった第一世代ということになります。

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そして1958年生まれのデビー・エヴァンス(Debbie Evans)。1978年のスタント競技会で、並み居る男性参加者を押しのけてカースタント部門と乗馬部門で1位、バイクスタント部門で2位の栄冠に輝き、女性スタントに対する業界の見方を一変させます。女性スタントが男性スタントより技術的に劣ることはないと身をもって示したわけで、全体として勇気づけられるエピソードが多い本作の中でも彼女の語りには心躍らされます。

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女性スタントの今後の姿として登場するのがメリッサ・スタッブス(Melissa Stubbs)で、スタントとして200以上の作品への出演を誇る彼女は、近年、スタントコーディネーターやアクション監督として活躍の場を拡げているそうです。ちなみに年齢は1970年生まれの51歳。上の世代がパフォーマーとしての拓いた道の先に、彼女たちが制作者としての道筋をつけていると言えるでしょう。

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姉妹で出演していたのはハイディ・マニーメイカー(Heidi Moneymaker)とレネー・マニーメイカー(Renae Moneymaker)の二人。レネーはこのブログでも「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」でマーゴット・ロビーのスタントとして紹介しましたが、彼女のinstagramを見ると(→こちら)ぱっと見は似ていても腹筋が違いますね。そのとき彼女が演じたアクションシーンはYoutube(→こちら)で視聴できます。

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この映画、驚くようなスタント技術も見せてくれるのですが、何よりそれを演じる生身の人間の生き方が感動的です。飄々とユーモラスなジーニー・エッパーが感傷的になったり、ジェイディ・デイビッドが女性としてだけでなく黒人としても主張を続けていたり、先駆者たちの語りから滲み出すものに気持ちを揺さぶられます。女性スタントの黎明期の証言を記録したという点でも貴重な映画だと思います。

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監督を務めたエイプリル・ライト(April Wright)はほぼ無名ですが、出演者の1人でもあるミシェル・ロドリゲス(Michelle Rodriguez)が製作総指揮として参加しています。

公式サイト
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち

[仕入れ担当]