映画「スイス・アーミー・マン(Swiss Army Man)」

0 どう考えてもB級映画の設定なのに、ダニエル・ラドクリフ(Daniel Radcliffe)とポール・ダノ(Paul Dano)が主演という、妙に豪華な作品です。

どういう設定かといえば、無人島で絶望して自殺を図ろうとした青年ハンクの目の前に死体が流れ着き、この死体のおならのガス圧をジェットスキーのように使って島から脱出するというもの。

予告編に使われている死体ジェットスキーがクライマックスだと思っていたら、これは序章の一部に過ぎなくて、その後も死体に備わった便利機能を使ってサバイブしていきます。おわかりだと思いますが、タイトルはスイス・アーミー・ナイフのように便利な男という意味で、スイス軍には関係ありません。

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設定も奇想天外ですが、ストーリー展開もなかなか独創的なもの。ちょっとネタバレになりますが、死体はそのうち喋るようになります。そこからは男2人の、いわゆるバディムービーのスタイルになり、愛について語り合ったりします。

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ポール・ダノ演じるハンクが、ダニエル・ラドクリフ演じる死体のメニーに人間社会の常識を説き、質問に答えていくうちに世の中の矛盾に気付いたり、自分を偽っていたことに気付くという、ある種の精神的な成長譚でもあります。

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喋る死体であるメニーは、死を覚悟したハンクの自己投影なのかも知れませんが、エンディングは夢オチではありません。一応、きっちりケリを付けているあたりには好感が持てます。また、おなら主体の珍妙なストーリーに反して映像が美しく、そのおかげもあって下品な話題が頻出する割に不快感はありません。

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いずれにしても2人の怪演が光る一作です。特に死後硬直した状態を保ち続けるダニエル・ラドクリフは渾身の演技と言って良いでしょう。

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DANIELSとクレジットされる監督は、ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート(Daniel Kwan & Daniel Scheinert)の2人組で、これまでミュージックビデオを作っていた人たちだそう。美しい映像を撮っているのは、ラーキーン・サイプル(Larkin Seiple)という人で、彼もまたMVの世界で活躍していたそうです。

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ちなみに死体ジェットスキーの場面で口ずさむ曲を私は“Only You”のFlying Picketsカバーバージョンだと思っていたのですが、実はオリジナル曲とのこと。音楽を担当したインディーズバントManchester Orchestraのアンディー・ハル(Andy Hull)が、終盤のカメラマン役でカメオ出演しています。

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公式サイト
スイス・アーミー・マンSwiss Army Man

[仕入れ担当]