今年20周年を迎える東京都写真美術館が、愛称をトップミュージアムに変更してリニューアル・オープン。それを記念して開催中の話題の展覧会「杉本博司 ロスト・ヒューマン」を観てきました。
人類と文明の終焉がテーマです。廃墟となったアメリカ各地の劇場でスクリーンに自選の映画を投影し、上映されているあいだカメラのシャッターを開いたままにして映画1本分の光を取りこんで撮影した作品や、7年越しの交渉を経て早朝の自然光のみで撮影が許可された、三十三間堂の千手観音が拝めます。
また代表作「海景」の写真から始まる3階展示室では、古いポスターや雑誌、化石や模型、歌って踊るロブスターや喋るオウムなど、写真美術館とは思えないモノばかりで構成された33のインスタレーションを展開。「今日、世界は死んだ。もしかすると昨日かもしれない。」というフレーズとともに、美術史学者やジャーナリスト、国際連合事務総長たちが体験するかもしれない世界の終わりを空想しています。
ある養蜂家が語る人類の最後は、せっせと運んできた蜂蜜を人間たちが横取りしてしまうために、蜂たちは帰巣本能をなくし、植物が滅びてしまい世界が砂漠化してしまう。あるロボット工学者は、ロボット奴隷制の時代が到来したが、人間が楽をしすぎて、ロボットたちに社会を乗っ取られるが、結局、富士山の大噴火によってロボットも壊滅してしまうというシナリオ。
写真家としてだけでなく、建築の世界でも注目され、日本の古美術にも造詣が深いマルチな才能をもつ現代美術家・杉本博司氏(参考:2012年の展覧会)ならではの展覧会です。
2階展示室の外では、作家のドキュメンタリー映像が流れていて、直島で再建した護王神社について語る杉本氏や、骨董市を見てまわったり、卵焼きをつくるチャーミングな姿も観られます。
杉本博司 ロスト・ヒューマン
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2565.html
2016年11月13日(日)まで
[店長]