この夏「ル・コルビジェの建築作品」として世界遺産に登録された国立西洋美術館で開催中の銅版画展です。複製版画の先駆者で、15世紀後半から16世紀初頭に活躍したドイツの銅版画家イスラエル・ファン・メッケネムの作品がご覧になれます。
コピーであっても優れた作品であれば原作に劣らない評価を受けたこの時代。メッケネムが制作した模作品はヨーロッパ中に広まり、銅版画の普及に大きく貢献しました。
作品の多くはキリスト教を主題にしたもので、護符や礼拝の対象として人々の生活の中で活用されています。特にマリア、ヨハネ、キリストの3人で構成される磔刑は、15世紀ドイツで数多く制作されたモチーフで、家庭用の礼拝像として好まれたそうです。
また文学作品から題材をとった恋愛の駆け引きや、気性の激しい妻とその尻に引かれる夫の諍い、狩人と猟犬を捕らえ火にあぶる野うさぎを描くなど、ユーモアと風刺を込めた世俗的なモチーフも見どころです。これらの多くはメッケネムのオリジナルといわれていて、羽飾りのついた帽子をかぶり尖った靴を履く男性や、ぴったりした胴着と長いスカートをまとった女性など、当時のファッションも表現されています。
1430年代に発展を遂げた銅版画技術は、金銀細工師の工房で発明されたため、メッケネムをはじめ初期の職人たちの多くは金工の技術も持っていました。高価な素材をあつかう金工師はステータスが高かったことから、メッケネムは金工師と名乗ることもあったそうです。
本展では、神の子羊が彫られた銀細工など、当時の美しい工芸品もご覧になることができます。
聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016meckenem.html
2016年9月19日(月・祝)まで
[店長]