フィンランドで最も愛された女性画家 ヘレン・シャルフベック(Helene Schjerfbeck)の日本初の回顧展が、上野の東京藝術大学大学美術館で始まりました。
日本ではあまり知られていませんが、シャルフベックの生誕150年を記念して2012年にフィンランド国立アテネウム美術館で開催された大規模な回顧展により、世界的に注目される画家の一人となっています。
ヘルシンキで生まれ、11歳のときにフィンランド芸術協会の素描学校に入学。18歳でパリへ渡ったシャルフベックは、マネやセザンヌ、ホイッスラーから強い影響を受けつつ、独自の色表現を見いだしていきます。
幼少の頃の事故で脚が不自由だったシャルフベックは、後年はフィンランドからほとんど出ることなく制作を続けましたが、フランスの美術雑誌やモード誌を取り寄せ、常に最新情報を得ていたそうです。ファッションにも敏感で、雑誌の付録にあった型紙でドレスをつくったり、ギャラリー・ラファイエットで衣服を注文していたとか。ファッショナブルなスタイルの女性たちが登場する作品群は見どころの一つになっています。
また肖像画を描くことが好きだった彼女は、身の回りの人をモデルにした作品の他、自身を描いた自画像も必見です。画家としてのキャリアが充実していたときの《黒い背景の自画像》、失恋で悲しんでいたときの《未完成の自画像》、死に向かう自分を見つめていたときの《自画像、光と陰》など、その時々の心情を垣間見ることができます。
鑑賞後、フィンランド国立アテネウム美術館主任学芸員 アンナ=マリア・フォン・ボンスドルフさんの講演会を聴講しました。シャルフベックが、アースカラーを好み、色をシンプルに絞り込んでいったことや、現代と過去を一枚の画の中に混在させることで時代を超越させていったことなど、たくさんの興味深いお話をうかがえました。
フィンランド国宝級の作品《快復期》をはじめとするシャルフベックの代表作を見渡せる展覧会です。一見の価値ありだと思います。
ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし
http://helene-fin.exhn.jp/
2015年7月26日(日)まで
[店長]