映画「ストックホルムでワルツを(Monica Z)」

0 スウェーデンの国民的ジャズシンガーだったモニカ・ゼタールンド(Monica Zetterlund)の生涯を描いた作品です。私は彼女について何も知らなかったのですが、それまで英語でしか歌われなかったジャズをスウェーデン語で歌って人気を博した歌手だそうです。

代表曲は、ビル・エヴァンス(Bill Evans)の「ワルツ・フォー・デビィ(Waltz for Debby)」を、ビル・エヴァンスの伴奏とベッペ・ヴォルゲシュ(Beppe Wolgers)によるスウェーデン語の歌詞で歌った「モニカのワルツ(Monicas Vals)」。映画の中では、モニカを演じた女優で歌手のエッダ・マグナソン(Edda Magnason)が歌っているのですが、スウェーデン語で聴いても名曲ですね。

モニカ・ゼタールンドもチャーミングな美人ですが、演じたエッダ・マグナソンも、歌がうまいだけでなく、表情も魅力的な人です。そのせいか、本作の公開を記念した来日公演も既にソールドアウト。局地的にスウェーデン・ジャズ・ブームが来ているようです。

物語は駆け出しのジャズシンガーだったモニカが、電話交換手の仕事と掛け持ちで演奏活動をしていた時代からスタート。シンガーとしての才能を信じながらも、シングルマザーとしての現実があり、父親からの苦言に反発しながらスウェーデン中西部、ヴェルムランド県ハーグフォッシュの家で両親と暮らしています。

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娘のモニカには口うるさく、孫娘のエヴァ=レナには優しい父親のベント。実は彼自身がバンドマン出身で、その影響でモニカは小さい頃からジャズに触れてきたわけなのですが、そのあたりの事情は映画の中で次第にわかるようになっています。

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ある日、ジャスクラブでの演奏の後、NYで歌わないかとプロモーターに誘われます。夢を叶えたいモニカは、電話交換手の仕事を放り出してNYに飛ぶのですが、結局のところ、失敗。さらに、バーで出会ったエラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)に、ジャズがヒト真似で気持ちがこもっていないと指摘され、傷心でスウェーデンに戻ります。

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その後、ベッペ・ヴォルゲシュの詩と出会い、スウェーデン語で歌うようになっていくのですが、歌手としてのサクセスストーリーはこの映画の一面でしかありません。もう一つの重要な柱は、向上心の塊のような彼女の性格と、それをとりまく男性たち。

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何しろシングルマザーですから、相手は娘を大切にする人であることが前提。そういった面で言えば、映画監督のヴィルゴット・シェーマン(Vilgot Sjöman)は最適だったのですが、彼との同居が破綻して以降、さまざまな男性と関わり、なんと映画の最後はウェディングシーンで幕を下ろします。

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もちろん、劇中で歌われる名曲の数々や、それぞれのシーンで登場するミュージシャンたちも見どころです。

最初にNYに行った先で共演するのは、ピアニストのトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)、ベーシストのダグ・ワトキンス(Doug Watkins)、ドラムスのデンジル・ベスト(Denzil Best)ですが、モニカはトミー・フラナガンの全アルバムを揃えるほどファンだと語ります。

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その他、ビル・エヴァンスとのステージの客席にはエラ・フィッツジェラルドやマイルス・デイヴィス(Miles Davis)がいますし、ジャズ好きの方は、いろいろな楽しみ方ができそうです。エッダ・マグナソンの素敵な声もあいまって、最初から最後まで気持ち良く鑑賞できる映画です。

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公式サイト
ストックホルムでワルツを

[仕入れ担当]