ハリウッド女優からモナコ公妃に華麗な転身を果たした故グレース・ケリーをニコール・キッドマン(Nicole Kidman)が演じ、今年のカンヌ映画祭のオープニング作品に選ばれて注目を集めた映画です。監督は、マリオン・コティヤール主演の「エディット・ピアフ」で高い評価を受けたオリヴィエ・ダアン(Olivier Dahan)。
映画の冒頭から、史実をベースにしたフィクションである旨が表示されますが、クライマックスシーンの重要人物(You’re not really going to drop a bomb on Princess Grace, are you Charles?と話しかけられる人物)が実はその場にいなかったり、多くの部分が史実と異なるそうです。
そのせいもあって、現モナコ大公はじめ一族(下の写真の男の子が後の大公アルベール2世、女の子が公女カロリーヌの役)がカンヌのオープニング上映への出席を拒否し、これもまた話題になりました。
とはいえ、私のように今までモナコに何の関心もなかった観客にしてみれば、さまざまな発見がありますし、ストーリー的にも十分に楽しめる作品です。
物語のベースになっているのは、レーニエ3世(Prince Rainier III)と結婚したグレース・ケリーが、義理の姉にあたるアントワネット公妃(Princess Antoinette)を追い出したというエピソード。この一件、実際はレーニエ3世が結婚前にフランス女優のジゼル・パスカルと交際していた頃まで遡る長い話だそうですが、映画ではグレース・ケリーの時代に表面化したことにしてうまくまとめています。
モナコ公国は軍備を持たない都市国家であり、人口3万人程度の小国であることから、常にイタリアやフランスの保護下で生き延びてきました。映画の背景となる1960年代も、ドゴール体制にあったフランスからの干渉に苦しめられていたようです。
そんな状況をグレース・ケリーが救うわけですが、その過程を通じて女優だった過去と決別し、モナコの人々に愛される公妃として生きていく覚悟を固める姿がドラマティックに描かれていきます。
ニコール・キッドマンの相手役、レーニエ3世を演じているのはティム・ロス(Tim Roth)。現モナコ公国の一族はご不満のようですが、旧態依然としたダメ貴族らしさ溢れる演技は、なかなかのものだと思いました。
海運王オナシス(Aristotle Onassis)を演じたロバート・リンゼイ(Robert Lindsay)の俗物っぽさも良かったと思いますが、アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)を演じたロジャー・アシュトン=グリフィス(Roger Ashton-Griffiths)は、ヒッチコック本人にすごく似ていてびっくりです。
そしてマリア・カラス(Maria Callas)を演じたパス・ベガ(Paz Vega)。スペイン映画をよくご覧になっている方はご存じでしょうが、「ルシアとSEX」で注目を浴び、「トーク・トゥ・ハー」や「スパングリッシュ」に出演しているセビリア出身の女優さんです。もちろん吹き替えだと思いますが、彼女がプッチーニの"O mio babbino caro"を歌うシーンはとっても印象的。この曲を聴くと「眺めのいい部屋」の情景を思い出しますね。
また、本作にはカルティエ(Cartier)が協力していますので、ニコール・キッドマンとパス・ベガを飾る豪華なジュエリーも見どころです(こちらのVogueのサイトで閲覧可)。
ちなみに下の写真、パリの店頭のシーンで着けていたプードルのブローチは、270粒のダイヤモンドを散りばめた1958年の作品のレプリカだそう。ついでながらヒョウ柄コートの女性は「サガン」でペギー・ロッシュを演じていたジャンヌ・バリバール(Jeanne Balibar)。マチュー・アマルリックの元パートナーです。
公式サイト
グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札
[仕入れ担当]