映画「トランス(Trance)」

Trance0 「スラムドッグ$ミリオネア」でアカデミー監督賞を獲ったと思ったら、ロンドンオリンピック開会式の芸術監督を務めるなど、話題に事欠かないダニー・ボイル(Danny Boyle)監督。

注目の最新作は、オークション会場から消えた名画を巡って繰り広げられる心理サスペンスです。

リズム感抜群でキレがあり、ダニー・ボイルらしさ満載だなぁと観ていたら、脚本に「シャロウ・グレイブ」「トレインスポッティング」を手掛けたジョン・ホッジ(John Hodge)が参加してるのですね。

そこはかとなく漂う狂気で、先が読めず、最後までドキドキさせられるような展開。昔のダニー・ボイル作品が好きな方は必見だと思います。

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まず、オープニング。名画盗難の歴史をテンポよく解説しながら、これから語られる物語への期待感を高め、観客をぐんぐんと引き込んでいきます。

名画がいくつか示されますが、最も詳しく語られるのがガリラヤ海の嵐(The Storm on the Sea of Galilee)。中心に描かれている青い服を着た男は作者であるレンブラント自身の姿だが、もう見ることはできない、なぜならば盗まれたからだ、と話が続き、本作で名画盗難の舞台となるオークション会場に場面が移っていきます。

ちなみに、作品内に自身の姿を描くというのは、ちょっとした伏線になっていて、映画中盤のカード賭博の場面にダニー・ボイル監督がゲームに興じる客の1人として登場します。

オークションシーンの張りつめた雰囲気と小気味よい進行に見入っていると、一気に魔女たちの飛翔(Vuelo de Brujas)盗難の場面へ。この強奪シーンが映画の要となるのですが、ここまでのスムースな展開のおかげで、観客としては、何か大切な部分を見逃したのではないかとずっと思い続けることになります。

その後、強奪したはずの絵画がなくなっていることがわかり、絵画の行方をめぐって、主人公の記憶を探る作業が始まります。

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そこで使われるのが睡眠術療法。この催眠セラピストを演じたのが、ダニー・ボイル監督の元カノ(この春に破局)、ロザリオ・ドーソン(Rosario Dawson)なのですが、彼女の演技が抜群です。睡眠術をかける声といい、その佇まいといい、映画の展開に緩急をつけ、観客が想像力を働かせる余地を残します。

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記憶の底を探られる主人公を「声をかくす人」のジェームズ・マカヴォイ(James McAvoy)、セラピストを雇って主人公の記憶を探ろうとする、絵画強奪の首謀者を「ブラック・スワン」のヴァンサン・カッセル(Vincent Cassel)が演じていて、この2人のコントラストが映画をスリリングなものにしています。

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余談ですが、ヴァンサン・カッセルも最近、モニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)との離婚を発表していましたね。

そして、音楽を担当したのは「トレインスポッティング」で"Born Slippy"を大ヒットさせたアンダーワールドのリック・スミス(Rick Smith)。「サンシャイン 2057」、ロンドンオリンピック開会式に続く、ダニー・ボイル監督との協働になりますが、観る側の気持ちをわし掴みにする疾走感は彼ならではでしょう。

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ということで、急転直下の展開で、思いもよらないエンディングに向けて突き進んでいく映画です。最初から最後までスクリーンから目が離せませんので、終映後、心地よい解放感に包み込まれます。

公式サイト
トランスTrance

[仕入れ担当]