映画「屋根裏部屋のマリアたち(Les Femmes du 6ème étage)」

Lesfemmes 先週の「最強のふたり」に続いて、コメディタッチのフランス映画です。東京では今週末で終わってしまいますが、DVD等でご覧になっても楽しめる映画だと思いますのでご紹介しておきます。

親から継いだ証券会社を経営するジャン=ルイは、プロバンス出身の妻と、寄宿制の学校に通っている息子2人の四人家族。

先代から仕え続けたフランス人メイドがいたのですが、部屋の模様替えで妻ともめたことをきっかけに馘首にしてしまいます。

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新しいメイドはスペイン人のマリア。映画で描かれている時代は1962年で、この当時、フランコ政権の圧制を逃れ、多くのスペイン人がフランスで働いていたようです。

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ジャン=ルイが暮らすパリのアパルトマンの6階(屋根裏)には、スペインからの出稼ぎメイドたちが住んでいて、マリアもそこで暮らすようになります。スペイン人メイドたちの陽気なライフスタイルと、慎ましくも魅力的なマリアに惹かれていくジャン=ルイ。

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大口の顧客であり、派手な男性関係で巷の噂になっていたベッチーナとの関係を妻から疑われたジャン=ルイは、妻と話し合うことを諦め、6階の空き部屋に移って暮らし始めます。初めての一人暮らしで自分の居場所を見つけたジャン=ルイは、価値観も次第に変わっていきます。

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ジャン=ルイを演じたのはフランスの名優、ファブリス・ルキーニ(Fabrice Luchini)。最近では「しあわせの雨傘」でドヌーブ様(Catherine Deneuve)の守旧派の夫を演じていましたが、この映画では旧いものから抜け出して新しい生き方を見つける中年男性の役柄です。

マリア役のナタリア・ベルベケ(Natalia Verbeke)のことはよく知らないのですが、メイド仲間のコンセプシオンを演じたカルメン・マウラ(Carmen Maura)、カルメンを演じたロラ・ドゥエニャス(Lola Dueñas)など、アルモドバル(Pedro Almodóvar)監督の作品で知られるスペイン女優が出ています。ピラール役のコンチャ・ガラン(Concha Galán)も、端役ながら「ボルベール〈帰郷〉」に出ていたようです。

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時代設定が1962年ですから、60年代のパリの風俗も見どころ。特にジャン=ルイの身勝手な妻、スサンヌを演じたサンドリーヌ・キベルラン(Sandrine Kiberlain)や、その友人たちのファッションには注目です。その反面、フランコ政権への批判やドゴール政権への皮肉は、ちょっと浮いている感じでした。そういう意味では、時代背景などを気にしないで素直に笑って楽しむ映画なのでしょう。

会話のほとんどがフランス語ですが、メイドたちはスペイン語で話しますし、ジャン=ルイも覚えたてのスペイン語を使ってみたりします。建前のフランス語と本音のスペイン語といった感じで対比させていますので、言葉がわかる方でしたら、さらに楽しめると思います。

公式サイト
屋根裏部屋のマリアたち

[仕入れ担当]