映画「人生はビギナーズ(Beginners)」

Beginners0 予告編やフライヤーでは、ゲイを告白した老いた父親と、恋愛に臆病な息子の物語という印象を受けるかも知れませんが、その実、ユアン・マクレガー(Ewan McGregor)とメラニー・ロラン(Mélanie Laurent)の美男美女が繰り広げる、とっても素敵なラブロマンスです。

監督は「サムサッカー」のマイク・ミルズ(Mike Mills)。GAPやNIKEのカッコいいCMをディレクションして一世を風靡した人ですから、この映画も、ひとつひとつのシーン、構図や光の捉え方がたまらなくお洒落ですし、会話もBGMも隅から隅まで気が利いてます。

ちなみに老いた父親がゲイであることを息子にカミングアウトするという設定は、マイク・ミルズ監督の実体験だそう。

美術館の仕事を引退し、妻と死別した後、残りの人生を本来の姿で生きていこうとする老人、ハルを演じるのは、映画「ドラゴン・タトゥーの女」で調査の依頼主を演じていたクリストファー・プラマー(Christopher Plummer)。数年前に「トルストイ最後の旅」でアカデミー賞にノミネートされていましたが、この映画でもアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされています。

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ユアン・マクレガー演じるオリヴァーは、ハルから「一生、1人で生きていくつもりか?」と心配される38歳の独身男性。ガンを宣告された後も、若いゲイの恋人と余生を楽しむハルに刺激を受けながら、それでも引っ込み思案な性格は変わりません。

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ハルを看取った後、職場の仲間から誘われて出掛けたパーティで、メラニー・ロラン演じるフランス人女優のアナと出会います。

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この出会いのシーン、仮想パーティというのもうまい仕掛けですが、アナが喉を痛めていて喋れないという設定で、筆談や無言電話でコミュニケーションするあたりが洒落ています(無言電話を受けたオリバーのセリフは I’ve always wanted to have a phone call with somebody who doesn’t talk)。

そこから2人は急接近するわけですが、関係が築かれていく過程でもオリヴァーは揺らぎます。そしてアナの心も揺らぎます。アナはアナで抱えているものがあり、互いに繋がろうとしながら、なかなかしっくりいかないのです。

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オリヴァーから、ハルが出会いを求めてゲイ雑誌に投稿した原稿を見せられたアナが、He didn’t give up(字幕「愛に貪欲だったのね」は名訳ですね)とコメントしますが、まさにこの部分がオリヴァーとハルの違い。ですから、父親がゲイだったということよりも、父親が恋愛に積極的な人だったということのほうが、オリヴァーに大きな影響を与えます。

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そんな2人と1匹の犬の日常を、亡くなるまでのハルの姿と、オリヴァーが両親から受けた影響、特に母親のユニークなキャラクターを織り交ぜながら、時間軸を行ったり来たりしながらユーモラスに描いていく映画です。バレンタインデーは過ぎてしまいましたが、ロマンチックな気分に浸りたいときにぴったりだと思います。

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