映画「再会の食卓(Apart Together)」

Tuanyuan1 久しぶりに映画のお話、それも中国映画です。個人的に、ここしばらく中国映画を観ていませんでしたので、映像的にも言語的にもとても新鮮でした。

舞台は近年の上海。戦時中に国民党の兵士として台湾に渡ったままになっていたイェンションが、生き別れになった妻、ユィアーに会いにくるところから映画は始まります。ユィアーは当時、イェンションの子どもを身ごもっていて、独り取り残され、絶望の淵に立たされるのですが、共産党の兵士だったシャンミンに救われて再婚、今は家族に囲まれて暮らしています。

約半世紀ぶりに上海の土を踏んだイェンションの心は、ユィアーを台湾に連れて帰ること。ユィアーにはイェンションとの間にできた息子の他、シャンミンとの間にできた娘たちと孫がいますが、それでもイェンションにその思いを告げられると心が揺れます。

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現在の夫、シャンミンは、普段は贅沢をしない人なのに、遠来の客であるイェンションのために高級な蟹を買ってきてユィアーにたしなめられたりする、根っからの好人物です。そんなときイェンションから「ユィアーを台湾に連れて帰りたい」と告げられ、どうなるのかと思って観ていると、「今までユィアーは自分と子どもたちのために尽してくれたので、これからは自由に生きて欲しい」と、あっさり了解するのです。

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子どもたちや娘婿が言い争ったり、現実的な解決を図ろうとするのと対照的に、当事者である三人はどこまでもシンプルに考え、素直に行動します。性善説というか、何の悪意も邪念も感じられないので、映画を観ている側は、次第に「三人ともうまく収まって欲しい」と願う気持ちになってきます。そんな映画です。

ユィアーを演じたリサ・ルー(盧燕)は「ラストエンペラー」で西大后を演じた国際派女優。1927年生まれといいますから撮影当時は80歳前後だったはずですが、まったく年齢を感じさせず、二人の男性の間で揺れる微妙な女心を表現していました。

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イェンションを演じた台湾人、リン・フォン(凌峰)も良かったと思いますが、やはり何といってもシャンミンを演じたシュー・ツァイゲン(許才根)のリアルな演技が素晴らしかったと思います。酔っぱらって大声で語り出したり、嬉しそうに他人の茶碗におかずをのせてあげたり、上海人の暮らしをのぞき見ているような感覚にさせてくれます。

食卓を囲むシーンが多く、それぞれ家族のつながりを示す情景として象徴的に使われているのですが、食事の間、長いシーンをほぼカットなしで撮っていましたので、この三人の演技力は大したものだと思います。

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ちなみにこの映画の原題「圑圓(Tuan Yuan:簡体字で团圆、日本の漢字で団円)」は、一家団らんの意味だそう。日本語で大団円というとハッピーエンドの意味ですが、この映画のラストシーン、果たして大団円を迎えるかどうかは観てのお楽しみです。

公式サイト
再会の食卓

[仕入れ担当]