映画「ポンヌフの恋人(Les Amants du Pont-Neuf)」

Amantsdupontneuf 私が20世紀の映画ベスト10を選ぶとしたら、この「ポンヌフの恋人(Les Amants du Pont-Neuf)」は候補から外せない1本です。今年で製作20周年を迎えるそうで、先週末の29日からリバイバル公開されています。

DVDを持っているのでいつでも観ることができるのですが、監督のレオス・カラックス(Leos Carax)と、撮影監督のジャン=イヴ・エスコフィエ(Jean-Yves Escoffier)という完璧主義の2人が創り上げた最高の(資金を集めるプロデューサーからすれば最悪だったようですが)映像は、やはり映画館のスクリーンが相応しいような気がしました。

完璧主義といえば、この映画が日本で公開される前、たぶん1990年より前だったと思いますが、主演のジュリエット・ビノシュ(Juliette Binoche)が雑誌のインタビューで「今回はホームレスの役で、すきっ歯にしているから笑えないの」と言っていて、びっくりした覚えがあります。実際に野宿してホームレスの生活をしてみたそう。本当にすごい人たちですよね。

説明するまでもないかも知れませんが、この映画は、改修中のポンヌフで暮らす火吹きの大道芸人アレックスと、失明の危機に瀕した画学生ミシェルの愛の物語。当初、昼間の場面をパリのポンヌフで、夜間のシーンをランサルグ村(Lansargues)に作ったオープンセットで撮る予定だったものが、撮影の遅れで昼間のシーンもセットで撮ることになり、製作費がどんどん積みあがって、2度も製作中止になりかけたという、いわく付きの作品です。

DVDの特典映像でも、最後の雪のシーンでは、粗塩50トンと精製塩10トンと大量のフェルトで欄干や道路を飾ったとか、橋の向こうに見える車のライトを表現しようと自動車を手配していたが、結局、膨大な電飾で対処したとか、いろいろと語られていました。クランクアップ後も資金的に厳しかったようで、セットで使われた橋の部分が今も撤去されずに残っているといいます(場所はここだそうです)。

ちなみに、映画にたびたび映り込む、ポンヌフのたもとの老舗百貨店サマリテーヌ(La Samaritaine)は、2001年にLVMHグループに買収された後、2005年に建物の老朽化を理由に閉店しました。もう百貨店として営業することはないそうで(LVMHグループはLe Bon Marchéも所有しています)、妹島和世と西沢立衛による建築ユニット:SANAAが改修して、2011年にオフィスや住居の複合ビルとしてオープンするということです。

映画の内容の話に戻りますと、完璧主義者が集まって作っただけあって、まるごと名場面集といった趣きの作品ですが、何といっても革命200年祭の花火を背景に、アレックスとミシェルがポンヌフで踊るシーンは圧巻ですよね。次々に打ち上げられる膨大な花火と「美しく青きドナウ」の壮麗な曲調があいまって、何度観ても感動するシーンです。

これ以外にも、2人がパリの街に繰り出すシーンで使われているデヴィッド・ボウイ(David Bowie)のTime Will Crawlや、エンディングで使われているレ・リタ・ミツコ(Les Rita Mitsouko)のLes Amantsも、映像と音楽がぴったり重なり合って記憶に刻み込まれています。

映画館から帰った後、早速、Les Amantsが収録されている「System D」を引っ張り出してきて、iTuneに入れました。この映画でレ・リタ・ミツコを知って以来、来日公演(Festival Halou)に行ったり、パリのFnacに行くたびに新譜を買い込んだりしていましたので、彼らのCDはたくさん持っているのです。※2007年にFred Chichinが亡くなり、現在、Catherine Ringerは単独で活動中です。

Leritamitsouko

あと、今回のリバイバル上映で手に入れたかったのが、映画のプログラム。日本公開時にも買ったのですが、誰かに貸したままになっているようで、他のカラックス作品は全部あるのに「ポンヌフの恋人」だけ見つからないのです。

Programs

今回のプログラムは卓上カレンダー型ということで、情報量的にはちょっと寂しいのですが、とりあえず手に入れることができて満足です。

Pontneuf

公式サイト
ポンヌフの恋人

[仕入れ担当]