今週、新宿のバルト9で開催されていたスペイン映画祭(Festival de Cine Español)で観てきました。「死ぬまでにしたい10のこと(My life without me)」や「あなたになら言える秘密のこと(La Vida secreta de las palabras)」、以前ブログでご紹介した「エレジー(Elegy)」等の映画で知られるイサベル・コイシェ(Isabel Coixet)監督の最新作です。
菊地凛子さんが主演、東京が舞台ということで、カンヌ映画祭(Festival de Cannes)に出品されたときも注目を集めていましたが、今回、観に行った回も最前列の端まで満席。本邦初公開ということで、関係者の方もたくさんいらしていたようで、上映前、イサベル・コイシェが舞台挨拶に登場し、私のすぐ前の客席にいた中原丈雄さんを紹介していました。
築地市場で働く Ryu(Rinko Kikuchi)の裏の稼業は殺し屋。大企業幹部(Takeo Nakahara)の娘が自殺し、その原因となった恋人のスペイン人、David(Sergi López)を殺害するように依頼される。しかし、なぜかRyuはDavidに惹かれていき……という、ちょっと強引なストーリー。
イサベル・コイシェいわく、来日したとき目にした築地市場で働く若い女性からイマジネーションを膨らませたということですが、東京の面白さをふんだんに盛り込んだ分、物語の展開に無理があった感じ。以前の作品のような、じっくり心のヒダを描いていく映画を期待していると、肩透かしを食らわされた気分になるかも知れません。
とはいえ、映像の素晴らしさは今まで通り。築地市場や浅草花やしき、臨海線の車内風景やラブホテルの奇妙な部屋、ラーメン屋や自動車教習所など、日本独特の風景がポエティックに撮られていて、Fnacのマンガコーナーで立ち読みしているような日本通の人には堪らないでしょうね。相変わらず選曲のセンスもよくて、美空ひばりのLa vie en roseは、驚くほどピッタリ映像と合ってました。
よっぽど気に入ったのか、ポスターや公式サイトのいたるところに魚型の醤油差しが登場しているのですが、よくよく考えてみると、こういう妙なところで創意工夫する日本人の感性と、映像や音楽など細部に凝るイサベル・コイシェの映画とは、どこか通じるものがあるのかも知れません。
公式サイト
Map of the Sounds of Tokyo
[仕入れ担当]