今月末まで世田谷美術館で開催している、スペインの彫刻家 フリオ・ゴンザレス(Julio González)の回顧展を観てきました。
1876年バルセロナの鍛冶職人の家に生まれたゴンザレスは、金工職人として生計を立てつつ画家になることを目指し、1900年に一家でパリへ移住します。金工の仕事で暮らしを支えながら、油彩を描いていたゴンザレスは、世界大戦中には生活のためルノーの工場でガス溶接の仕事もしました。
1920年代半ばにブランクーシの助手を務めた後、バルセロナ時代から親交があった旧友ピカソに鉄の溶接技術を教えることになります。1928年から数年間、ピカソと同じアトリエで共同作業を続ける中で「彫刻家」として目覚めたといわれる、遅咲きの作家です。
本展には、スペイン・バレンシア現代美術館(Institut Valencià d’Art Modern)が所蔵するコレクションを中心に、計94点の彫刻や素描が展示されています。
金属板を叩き出して人物の姿を浮き立たせた初期の作品から、金属板にモチーフの輪郭の切り込みを入れ、余白から迫り出すように表現した作品、空間を活かすため金属の細長い棒を溶接して組み合わせていった作品など、近代彫刻における革新的な表現を追求していった姿をみることができます。
バルセロナ時代にモデルニスモの影響を受けて制作した金工細工や、パリ時代に手がけた宝飾品なども見どころの一つです。
スペインの彫刻家 フリオ・ゴンザレス – ピカソに鉄彫刻を教えた男
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html
2016年1月31日(日)まで
[店長]