現代のイスラエルを代表する女性アーティスト、シガリット・ランダウ(Sigalit Landau)の日本初の個展が、銀座のメゾンエルメスで開催されています。
会場に入り、まず最初に目に飛び込んでくるのは、大きなプロジェクターで映し出される映像作品「Out in the Thicket 茂みの中へ」です。平和の象徴で、幸福を呼ぶともいわれるオリーブの木がモチーフになっています。
イスラエル南部のオリーブ園で撮影された収穫の様子は、生産量を上げるために、機械で木の幹を掴み、激しく揺さぶるものでした。
オリーブの木材は硬く耐久性があると聞きますが、その揺さぶり方は尋常ではありません。実や葉がバラバラと落ちてくる様子はとても痛々しく、恐怖すら感じます。
続いて、2つ目の作品「Behold the Fire and the Wood 火と薪はあります」では、作家の祖父の家を再現したという、キッチンとリビングに招かれます。
1950年代のイスラエル家庭をイメージした空間ですが、明るいキッチンには、汚れたままのシンクがあり、焦げついたコンロからボソボソと聞こえてくる話し声や、奇妙な音楽に、違和感を覚えます。
リビングのソファ下に墓石があり、部屋の片隅に枯れた花が飾られ、ブラウン管にはエンドロールが寂しく流れています。
そのリビングの奥から暗い通路を抜けると、キッチンの横にある鉄扉に繋がるのですが、その扉は焼却炉を暗示しているそうです。
火と薪で暖かい部屋や食事を手に入れられますが、火と薪で死をもたらすこともできる。幸せの裏側には常に犠牲があるという、作家の痛烈なメッセージが伝わってきます。
「ウルの牡山羊」シガリット・ランダウ展
The Ram in the Thicket by Sigalit Landau
http://www.art-it.asia/u/maisonhermes/TCnRiW7lscfHF9Je24mq/
メゾンエルメス 8階フォーラム:11時-20時(日曜19時まで)
2013年8月18日(日)まで
[店長]