映画「ソウル・キッチン(Soul Kitchen)」

Soul0 「愛より強く(Gegen die Wand)」で知られるトルコ系ドイツ人の監督、ファティ・アキン(Fatih Akin)が、自らが生まれ育ったハンブルグの街を舞台に描いたコメディタッチの映画です。2009年のヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を獲得しています。

ハンブルグで食堂「ソウル・キッチン」を経営しているジノス。冷凍食品やレトルト食品を多用している店ですので、客層もそれなりですし、税金を滞納してオーディオを差し押さえられたりしています。ジャーナリストのガールフレンドは上海に旅立ってしまうし、ついていません。

そこへ、窃盗で服役していた兄のイリアスが仮釈放されて訪ねてきて、今は週末しか外出できないが、定職に就ければ毎日外出できるので、この店で働いていることにして欲しいと頼まれます。

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そんなとき、会食で行った高級レストランで、ガスパチョを温めろと要求してきた客にキレて、クビになってしまう酒飲みの天才料理人、シェインと知り合います。腰を痛め、店を休業しなくてはならなかったジノスは、彼をシェフとして迎え入れることにします。

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レトルト食品に慣れた常連客は離れていってしまいますが、イリアスがDJ用の機材をくすねてきてソウルミュージックをかけ始めると、新しい客が集まってきて店は大繁盛。シェインも料理専門誌の表紙を飾るまでになって、事態が好転したかのように見えたのですが……、というのが粗筋です。

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これまでのファティ・アキンの映画のような深刻さはありませんが、主人公のジノスはギリシャ系という設定ですし、いろいろな移民が登場する映画です。多様な文化が交錯する面白さと、それを表現するカラフルな映像という彼の映画の軸の部分は変わっていません。

また、選曲の良さで定評ある監督ですが、今回は「ソウル・キッチン」という題名通り、モータウン系のグルーブ感ある音楽が中心。店がどんどん繁盛していく様子と、ノリノリの音楽がぴったりマッチしています。

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兄のイリアス役はモーリッツ・ブライブトロイ(Moritz Bleibtreu)。ファティ・アキンの映画では、ドイツからトルコへ旅する「太陽に恋して(Im Juli)」で印象的な演技を見せていましたが、「ラン・ローラ・ラン(Run Lola Run)」にも出ている人です。

シェフのシェイン役は「愛より強く(Gegen die Wand)」のビロル・ユーネル(Birol Ünel)。「太陽に恋して」にも出演しているアキン映画の常連ですが、トニー・ガトリフ(Tony Gatlif)監督「トランシルヴァニア(Transylvania)」でも味わい深い演技をみせていました。

楽しく笑って、ところどころで少し切なくて、最後はハッピーエンドという、気楽に観ることができる映画だと思います。

公式サイト
ソウル・キッチンSoul Kitchen

[仕入れ担当]