久しぶりに、予告編を観ただけで、うるうるしてしまった映画です。その後、何度も予告編を観ているうちに本編を観たような気分になっていたのですが、やはりちゃんと観ておこうと日比谷シャンテまで行ってきました。
病院にピザのデリバリーに行ったローズが、偶然、白血病の少年オスカーと出会い、彼の12日間の余命を一緒に生き抜くという物語。監督を務めたエリック=エマニュエル・シュミット(Éric-Emmanuel Schmitt)のベストセラー小説を基にした映画だそうです。
不治の病×純真な子ども。この設定だけで映画の方向性は見えたようなものですが、さすが「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」の原作を書いた人だけあって、涙のツボを心得ています。子役の台詞ひとつひとつが、じわっとしみてきます。さらに、オスカーを演じる子役、アミール(Amir)の長いまつげと愛らしい笑顔で、ツボを押されまくる感じです。
また、バツイチで口は悪いけど人情派というローズの役柄に、ミシェル・ラロック(Michèle Laroque)のキャラクターがぴったりはまっています。
原作の小説では、ピンク色の服を着たボランティア女性という設定のようですが、デリバリーピザの顧客獲得のためにオスカーの話し相手を引き受けてしまうという展開が自然な感じですし、オスカーとの交流を通じて、ローズ自身が自らの殻を破っていくというストーリーにも共感が持てるキャラクターです。
オスカーは1日で10年生きたと考えて、毎日、神様に手紙を書き、ローズはその手紙を風船につないで神様に送ります。つまりオスカーは創造力で年齢を重ね、初恋、結婚、誤解と和解、離別といった経験を積んで成長していくわけです。
これが年末の12日間のお話ですので、ちょうどクリスマスに人生の山場がきます。このあたりも演出のうまいところ。感動的なクリスマスストーリーになっています。
神様に手紙を書くといっても、とりたてて宗教的な要素が強い映画ではありません。ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)やジャン=ピエール・ジュネ(Jean-Pierre Jeunet)のような寓話的な映像を交えながら、ファンタジックに描かれる後味の良い映画です。ちなみに音楽はミシェル・ルグラン(Michel Legrand)。年末の慌ただしさに心が疲れたとき、ぴったりの映画だと思います。
公式サイト
100歳の少年と12通の手紙(Oscar et la Dame Rose)
[仕入れ担当]