映画「ノーウェアボーイ(Nowhere Boy)」

1 年の瀬になると、街のあちこちでジョン・レノンの曲を耳にするようになります。すでに一種の風物詩になっている感じですね。

この「ノーウェアボーイ(Nowhere Boy)」はデビュー前のジョン・レノンを描いた映画。ビートルズやジョン・レノンに特段の思い入れがあるわけではないのですが、何度か予告編を目にしているうちに興味がわいてきて観に行ってきました。地味な映画ながら、なかなか良い映画です。

物語の軸になるのは、主人公であるジョンと、養母のミミ、実母のジュリアの3人の関係です。禁欲的な生活を送るミミに対し、その妹のジュリアは“身持ちの悪い”享楽的な女。思春期のジョンにバンジョーを教えたり、遊びに連れ回したり、いろいろと影響を与えます。二人の母に愛され、傷つけられ、街の不良少年からミュージシャンへとジョン・レノンが成長していきます。

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若きジョン・レノンを演じているのは、1990年生まれのアーロン・ジョンソン(Aaron Johnson)。ジョン・レノンに似ているとは思いませんでしたが、声の感じが“それっぽい”ような気がしました。彼の好演と、ジュリア役のアンヌ=マリー・ダフ(Anne-Marie Duff)のノリノリの演技を、ミミ役のベテラン女優、クリスティン・スコット・トーマス(Kristin Scott Thomas)が巧みな演技で支えます。

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ちなみにポール・マッカートニー青年を演じてるトーマス・ブロディ・サングスター(Thomas Brodie Sangster)は、クリスマス映画の名作、「ラブ・アクチュアリー(Love Actually)」の子役だった人。シングルマンのときもそうでしたが、最近、子役時代に観た役者さんが、大人になっていて驚かされます。

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監督のサム・テイラー=ウッド(Sam Taylor-Wood)はもともとフォトグラファーだそうで、前作はアンソニー・ミンゲラ(Anthony Minghella)プロデュースの短編映画のみ。本作が長編映画第一作目とのこと。

さすがにフォトグラファー出身だけあって、リヴァプールの街が美しくスタイリッシュに撮られています。物語がシンプルなせいか構成もしっかりしていて、ホロッとくるシーンもあり、なかなか良い演出だと思いました。

このサム・テイラー=ウッド監督、映画の撮影後に主演のアーロン・ジョンソンと結婚し、今年の1月に出産したことでも話題になりました。監督は1967年生まれですから、実に23歳の年齢差を超えた結婚です。

さらに言えば、結婚後に1100万ポンドの豪邸(Dailymailに写真が載っています)を買ったことも報道されていました。なんでも監督の前夫、ジェイ・ジョプリング(Jay Jopling)はダミアン・ハースト等を売り出した裕福なギャラリストだそうで、離婚で得た慰謝料で豪邸を買ったと言われているようです。なんだかすごいお話ですね。

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話が逸れましたが、私のようにジョン・レノンの伝記を知らないで観ると、新たな発見のある映画です。映画のエンディングで、マザー(Mother)が流れますが、何気なく聴いていたこの曲が心に染みて、旧いCDを聞き返しては切ない気分に浸っています。

公式サイト
ノーウェアボーイNowhere Boy

[仕入れ担当]