映画「CLOSE/クロース」

CLOSE 長編映画2作目の本作がカンヌ映画祭のグランプリに輝き、アカデミー賞の国際長編映画賞やゴールデングローブ賞の外国語映画賞にもノミネートされたベルギー出身のルーカス・ドン(アンジェロ・タイセンス)監督。バレリーナを目指すトランスジェンダーの少女を描いた前作と同じく、アンジェロ・タイセンス(Angelo Tijssens)との共同脚本です。

主人公はベルギーの片田舎で暮らす13歳の少年レオとレミの二人で、いつも放課後を一緒に過ごす大の仲良しです。レオの両親と兄は花卉農家の仕事で多忙なこともあり、またレミが一人っ子ということもあって、レミの母ソフィーと父ピーターはレオを家族の一員のように受け入れています。

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レオはたびたびレミの家に泊まり、レミのベッドで一緒に眠ります。どちらの家族もそれを当然のこととして受け入れているのですが、ある日、同級生から“二人はカップルなの?”とからかわれたレオは、それを激しく否定し、レミとの間に距離を置くようになります。

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要するにホモフォビアですが、仲間はずれにされることを恐れたレオは、アイスホッケーのチームに入って交友範囲を変えます。レミの家に泊まる際も別のマットで寝るようにするのですが、朝、起きるとレミが隣に寝ていて、それに激怒したレオはレミをさらに遠ざけるようになります。

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もうレミの家に泊まりませんし、放課後は家族と農場で働くか、アイスホッケーの練習に参加します。これまでのように自転車を並べて一緒に帰ることもしません。

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傷ついたレミはレオに詰め寄るのですが、冷たくあしらわれて取り乱し、思わずレオに殴りかかってしまいます。憤怒に煮えたぎるレミに対して、レオはあくまでも冷静です。その落ち着いた態度にレミは絶望したのでしょう。

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レミが学校の遠足に欠席し、彼が亡くなったことを帰路のバスで告げられます。レオはショックを受けますが、教師との対話やクラスセラピーでも、心の中のわだかまりを打ち明けることはしません。アイスホッケーに打ち込み、さらに農場での仕事に力を入れることで、気を紛らすだけです。

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レオとレミが仲良かった時期と関係がぎくしゃくした時期、そしてレオが一人とり残された後の3つの段階を順を追って進んでいく物語ですが、レオを演じたエデン・ダンブリン(Eden Dambrine)の表情と振る舞いがすべてと言って良い映画です。誰もが経験するような、ちょっとした気持ちのすれ違いが思いがけない結果を生み、自分が原因かも知れないという社会的責任と、親友を喪って寂しいという個人的な感情が入り交じる姿を絶妙に表現しています。

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レミ役のグスタフ・ドゥ・ワエル(Gustav De Waele)も傷つきやすく芯の弱い少年の姿を上手に演じていましたが、やはり葛藤を抱え苦悩するレオの複雑さを体現したダンブリンの演技がこの映画の軸でしょう。

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彼らの演技と並んで良かったのがベルギーの片田舎というロケーション。牧歌的である反面、社会の狭さを感じさせる場所でもあるのですが、なによりレオの家族が働く花畑の情景が印象に残ります。四季の移り変わりを見せることで、二人の少年の変化を端的に伝えていく大切な要素になっています。

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二人の少年以外には、レミの母ソフィ役で「天国でまた会おう」のエミリー・ドゥケンヌ(Émilie Dequenne)、レオの母ナタリー役で「ジュリアン」のレア・ドリュッケール(Léa Drucker)が出ています。

公式サイト
クロース(Close)

[仕入れ担当]