なんと21年ぶりの続編なんですね。前作のディテイルは忘れてしまいましたが、観たときの衝撃はいまもはっきり覚えています。
あの映像と音楽をまた体験できるとなれば観に行かないわけにはいきません。
監督もダニー・ボイル(Danny Boyle)のままですし、登場人物もマーク・レントン役のユアン・マクレガー(Ewan McGregor)、シックボーイことサイモン役のジョニー・リー・ミラー(Jonny Lee Miller)、スパッド役のユエン・ブレムナー(Ewen Bremner)、そしてベグビー役のロバート・カーライル(Robert Carlyle)といったお馴染みの顔。
今もみんなダメダメで、まともになっているのはケリー・マクドナルド(Kelly Macdonald)演じるダイアンだけ、という設定もいい感じです。
本作は、前作で大金を持ち逃げしたマークが20年ぶりにエディンバラに戻ってきて起こる騒動を中心に物語が展開していきます。
逃亡先のオランダから帰国したマークがスパッドに会いに行くと、彼は自殺しようと頭からビニール袋を被ったところ。それをマークが救うのですが、この場面からグチャグチャで一気に前作の記憶が蘇ります。ヘロインをやめられず、せっかく得た妻子からも見放されて絶望していたスパッド。なんとか自殺を思いとどまらせたマークは、彼がヘロインをやめる手助けをする約束をします。
続いて持ち逃げしたお金の分け前をサイモンに渡しに行きます。叔母のパブ(Port Sunshine Pub)を継いで経営者になっていたサイモンですが、経営者といっても相変わらずコカイン中毒ですし、ブリガリア人の若いガールフレンド、ベロニカを使って美人局で稼いでいる有り様。マークから受け取ったお金もドラッグ代に消えてしまいます。
その後、殺人罪で服役していたベグビーが脱走してサイモンの店に現れ、マークが戻っていることを知って復讐に燃えるわけですが、このベグビーとマークの追いかけっこが物語の一つの軸となります。
そしてもう一つの軸が、サイモンとマークによるベロニカの取り合い。二人とも中年に差し掛かり、いろいろと冴えないのですが、どちらもベロニカは自分の女だと思い込んでいるあたりが切なくてリアルです。結局、いちばん信用されていたのはスパッドだったりするのですが、それは映画を観てのお楽しみ。
そしてベグビーと家族の物語。脱獄したベグビーは妻と息子が暮らす自宅に帰ります。親子でコソ泥をしようという考えなのですが、思いがけず息子はしっかりしていて、大学でホテル経営を学ぶ真面目な若者に育っています。
それでも無理やり息子を泥棒に連れて行くベグビー。父子の価値観の違いがじわじわと表面化していきます。ちなみに盗品を売りに行く先、故買屋のマイキーを演じているのは原作者のアーヴィン・ウェルシュ(Irvine Welsh)です。
もちろんマークはマークでいろいろ問題ありで、最初はサイモンに対して見栄を張っていますが、結局のところ妻に逃げられ、仕事を失って帰国したというのが帰国の真相。サイモンと一緒にグラスゴーのパブに行き、コートハンガーの財布からカードを盗んだりします。この場面で被害者となる客たちが統一主義者(Unionist)というあたりも、スコットランド訛りバリバリで地元愛あふれるこの映画らしいところです。
ダニー・ボイルらしく小ネタが楽しい映画ですが、マークの実家の自室の壁紙が列車模様だったり、注意してみているといろいろ仕掛けがあります。ちょっとネタバレになりますが、エンディングではこの部屋でLust for Lifeのレコードをかけるのですが、これに続く映像はさすがダニー・ボイル、さすがジョン・ホッジ(John Hodge)、さすがアンソニー・ドッド・マントル(Anthony Dod Mantle)と感心するカッコ良さです。
いくつになってもダメなヤツはダメなまま、という中年の悲哀を下地にしながら、家族関係の多様さを描いているのが本作の新しさでしょう。前作ほどの衝撃はありませんが、その分、含みが多く、楽しみ方の幅が拡がっているとも言えます。この映画の登場人物だちと共に年齢を重ねてきた方は必見です。
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T2 トレインスポッティング(T2 Trainspotting)
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