ニッキ・マーカートの帽子制作現場に潜入取材(!)

昨日お知らせしたとおり、今日は、先月末に訪れたニッキ・マーカート(Nicki Marquardt)のアトリエの様子をレポートします。

ショップ兼アトリエは、ミュンヘン市街地の中心にあり、界隈には大学、さまざまなショップ、カフェやレストランもある人気エリアです。

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大きなロゴ入りの看板が一際目をひきます。
ちょうど20年前の創業時は、同じ通りの別の場所にあったそうですが、5年後にこちらに移転。戦中に壊滅的に爆破されてしまったミュンヘンの街に残っている、数少ない戦前の建物ということで、歴史的建造物に認定されています。外装などの大規模改装はできないそうですが、それでも、広くなって、立地や雰囲気をとても気に入っているとのこと。

入り口を入った手前側がショップになっています。

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その奥にアトリエとオフィスが続きます。

その日は、パリ展示会の直前ということで、来春夏の新作モデル作りの大詰めを迎えていました。

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花にみたてた羽根飾りに、スワロフスキーを丁寧に縫いつけていきます。

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すべての工程が手作業です。ドイツの確立した職業教育とマイスター制度が、物づくりの伝統を支えています。

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デザイナーのニッキは、3mm という極細のスイス製クランを使って、デモンストレーションをしてくれました。

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クラン(crin)は馬の尻尾の毛を使った素材のことで、19世紀半ば頃から欧州で広まったスカートを膨らませるペチコートの素材としても使われていたと言えばイメージできるでしょうか。華やかなヘッドピースを作るために使われます。

現在、3mmの極細タイプを扱えるミシンは皆無なのですが、それを可能にしているのが、100年以上昔に製造されたこのミシン。

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そして、20年以上のキャリアが為せる匠の技です。

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たとえば下のヘッドピース。型紙のようなものがあるわけではありません。ミシンで縫い進めながら、カタチを作り上げていくのだそう。切って貼り付けたり、途中で継ぎ接ぎすることもありません。

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こちらもクチュール作品ですが、イタリア・ミラノの 4mm の稲わら素材を使用。デザイナーが新たに開発したスパイラルソーイングのテクニックを駆使して作られています。

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もちろん、アトリエには色とりどりの素材がズラリ。

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彼女のマスターピースであり、2012年に権威あるデザイン賞であるレッド ドット デザイン賞を受賞した(詳しくはこちら)折りたためる帽子など、サマーハットに欠かせない天然素材アバカやトーヨーペーパーも。

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以前、こちらのブログで紹介した英国エリザベス女王のために制作した下の帽子も、このように厳選された素材と卓越した職人技の結晶なんですね。

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秋冬に欠かせない素材・フェルトは、ポルトガル産ラビットファー(兎毛)製。

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フェルトは、熟練の木型職人によってスタイル毎に作られる木型を使って成型していきます。帽子の美しいフォルムは木型で決まると言っても過言ではありません。この積み上げられた木型の数がニッキ・マーカートのキャリアを物語っています。

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今シーズン注目のフェドーラの、高低差のあるトップクラウンもこの木型から生まれています。

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ニッキ・マーカートの上質でスタイリッシュな帽子の数々は、VOGUE誌などのファッション誌にも度々取り上げられてきました。

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パーティーやウェディングなどのスペシャルオケージョンのためのカスタムメイドの帽子はもちろん、オペラや劇などの舞台用の帽子制作も手がけています。

また、訪問した9月下旬はちょうどオクトーバーフェスト(Oktoberfest:世界最大規模のビールの祭典)の最中でしたが、下のような伝統的な帽子(もちろんニッキ流にアレンジ)も作っています。

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デザインと制作のすべてが、ここミュンヘンのアトリエで行われているんです。

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デザイナーのニッキ(中央)、彼女のもとで極意を学びながら、日々、帽子作りに励んでいるヤスミン(右)とアニヤ(左)。他にも2名のスタッフがいて、そのうちの一人はニットが専門、在宅勤務でニット帽制作に取り組んでいます。皆さんとってもフレンドリーです。

ミュンヘンにご旅行などで行かれる際には、ぜひ立ち寄られてください。
「モナドで知った」とおっしゃっていただければ(英語OK)、帽子のあれこれやスタイリングのアドバイスをしていただけるはずです♪

もちろん、モナドでも秋冬新作を展開中。極上の被り心地をぜひモナドでお試しくださいね。お待ちしております♪♪

[仕入れ担当]