1815年インドのカルカッタで生まれ、フランスで教育を受けた英国人写真家のジュリア・マーガレット・キャメロンは、初めてカメラを手にした48歳の時から独学で写真技術を習得し、精力的に制作を展開していきます。意図的に焦点をぼかし、ネガに傷やシミをつけ、あえて制作過程の痕跡を残すといった慣例にない手法は批判される一方で、構図の美しさや写真を芸術へと昇華させていく姿勢が高く評価されました。
ポートレートを得意とし、作品の多くは友人や家族、使用人をモデルとして、聖書や歴史、寓話に登場する人物に見立ててポーズをとらせています。
写真右下の女性メアリ・ライアンは、キャメロンお気に入りの女性モデルのひとりです。彼女は、ロンドン近郊で母親と物乞いをしていた際にキャメロンと出会いました。あまりの美しさに胸を打たれたキャメロンは2人を連れて帰り、使用人として養いながら教育を施したそうです。のちに騎士の爵位を与えられる男性に見初められて結婚し、上流社会の仲間入りをはたしたという、まさにシンデレラ。
英国の上層中流階級で社交生活を謳歌したキャメロンらしく、モデルにはチャールズ・ダーウィンやアルフレッド・テニスンといった著名人も数多くいました。また彼女はとてもバイタリティ溢れる女性だったようで、作品をコレクションし、スタジオも提供してくれたサウス・ケンジントン博物館(現ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)の館長へ、協力に対する感謝の言葉とともに、王室出身者でモデルになってくれる人を紹介してほしいという手紙を送っています。
本展は、キャメロン生誕200周年を記念し企画された国際巡回展の一環です。日本初の回顧展であり、キャメロン絶頂期の貴重なヴィンテージプリントが一堂に会する貴重な機会となります。
From Life 写真に生命を吹き込んだ女性
ジュリア・マーガレット・キャメロン展
http://mimt.jp/cameron/
2016年9月19日(月)まで
[店長]