映画「ハッシュパピー バスタブ島の少女(Beasts of the Southern Wild)」

Beasts0 南ルイジアナのバイユー(緩流河川)で暮らす一人の少女とその父親、コミュニティの人々を描いた映画です。

ベン・ザイトリン(Benh Zeitlin)という無名監督の長編デビュー作ですが、サンダンス映画祭で2010年のNHK賞と2012年のグランプリ、カンヌ映画祭のカメラドール(新人監督賞)を獲った他、米国アカデミー賞の作品賞、主演女優賞、脚本賞などにノミネートされて話題になりました。

ハッシュパピーは、長い堤防で市街地と隔てられた湿地帯、バスタブ島で父親のウィンクと暮らす6歳の少女。粗末な掘っ立て小屋の周りで家畜を飼い、冷蔵庫の代わりにクーラーボックスを使う貧しい生活ですが、似た境遇の仲間たちと楽しく生活しています。

世界は繊細な破片(little piece of a big, big universe)が組み合わさって調和を保っていると信じるハッシュパピー。環境破壊などで自然の秩序が崩壊すると、氷に閉じ込められていた巨獣オ―ロックスが襲ってくると信じています。

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そんな中、バスタブ島は100年に1度の大嵐に見舞われて水没し、コミュニティは壊滅状態に。残った仲間たちで水門を爆破して水の排出を試みますが、それが裏目に出て、このエリアから強制退去させられてしまいます。

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収容施設の病院でウィンクが余命僅かであることを知ったハッシュパピーは、コミュニティの仲間と一緒に収容施設から脱走してバスタブ島に帰りますが、治療を止めてしまったウィンクは日増しに弱っていきます。

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ハッシュパピーは、海の向こうにいると聞かされてきた母親を求めて、友だちと一緒に海に泳ぎ出します。

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船に拾われて謎の海上ナイトクラブに案内されて行くと、そこで働いている女性の1人がワニの唐揚げを作ってくれます。

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以前から、母親の得意料理はワニの唐揚げだと聞かされてきたハッシュパピー。束の間の幸せに浸りますが、巨獣オーロックスとの闘いのためにバスタブ島に戻らなくてはなりません。そして、ついにオ―ロックスがやってきて……、というのが大まかなストーリー。

マジックリアリズム的な作りになっていますので、こういう大雑把な梗概を読んでもこの映画の良さをイメージしにくいと思いますが、シンプルなストーリーですし、決して難解な映画ではありません。

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また、映画が伝えようとしていることも、おそらくとてもシンプルで、生命や生きる力にフォーカスしているのだと思います。

人間も獣であること、現代社会で生きる難しさ。そんな普遍的なことをバスタブ島の小さな社会を地球全体になぞらえ、自然と産業化社会、自由と規制などを対比させながら描いていきます。

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少女を主人公にしたことも良かったと思います。アカデミー賞にノミネートされたクヮヴェンジャネ・ウォレス(Quvenzhané Wallis)の名演のおかげもありますが、少女らしい夢想を抱きながら、意思の力で生き抜く姿が心に響きます。

いろいろな見方ができる映画だと思いますので、お友だちやご家族、お子様と一緒にご覧になって、後でお話するとまた新たな視点が得られるのではないでしょうか。

公式サイト
ハッシュパピー バスタブ島の少女Beasts of the Southern Wild

[仕入れ担当]