昨日の映画「ル・コルビュジエの家」のブログに続いて、コルビュジエ建築に泊ったときのお話です。
ユニテ・ダビタシオン(Unité d’Habitation)は、ル・コルビュジエが提唱していた理想都市を一棟で具現化したといわれる集合住宅で、その一つ、マルセイユのユニテの一部がホテルとして利用されています。
南仏に行ったら泊まってみたいとずっと思っていて、もう10年近く昔になりますが、泊ることができました。
とはいえ、予約の時点からすんなり行きません。原型を留めていると言われる部屋を指定してメールを送ったのですが音沙汰なし。今ほどメールが普及していない時代とはいえ、いつまでたっても返信がなくて、ファックスを送ってようやく予約確認できました。
場所はマルセイユの中心から少し離れていて、地下鉄のRond Point du Prado駅から歩いて10分ほど。界隈の住人たちはクルマかバス、またはよく整備された自転車道を自転車かスケートで移動しています。
ちなみにRond Point du Prado駅前のスタジアム、スタッド・ヴェロドローム(Stade Vélodrome)はオリンピック・マルセイユ(Olympique de Marseille、通称:OM)の本拠地で、サッカーのある日は自動小銃で武装した警官がパトロールしています。タクシーでここを通る度に運転手から「オリンピック・マルセイユは知ってるか?」と訊かれ、中には「オエム、オエム」と拳を突き上げて解説し始める輩までいる、そんな地域にユニテはあります。
この外観ですから、近づいていくとすぐにわかります。これぞル・コルビュジエ建築!という感じ。建物が浮かんでいます。
集合ポストのイエローカラーもお洒落です。
宿泊しない観光客も、屋上に上がってマルセイユの街を一望することができます。
奥に見えるのがプールです。住民の子ども達が遊んでいました。
杉板風の粗い仕上げのコンクリートによる植栽。1950年代に作られたとは思えない意匠性です。
保育園もあるそう。イーゼルが見えてますが、絵画教室でもやるのでしょうか?
ホテルとして利用されているフロアには、レセプションと軽い食事ができるカフェがあり、朝食はこちらでとります。ロフト部分に、建築物に関する説明や写真が展示されていて、ちょっとした資料室のようになっていました。
同じフロアにオフィスや店舗も入居していて、郵便局もあります。書店のウィンドウにSANAAの作品集が飾られていて、日本人としてちょっと誇らしい気持ちになりました。
さて宿泊した部屋です。原型を留めているという説明でしたが、どうだったのでしょうか。
コルビュジエが考案したモデュロール(Modulor)に基づいて設計されているので、全体的にこじまんりとしています。
窓枠も木です。ベランダの柵がテーブルのようになっていて便利です。
客船にあるような洗面所とシャワールーム。非常に狭くて、使い難いの一言に尽きました。
こちらはキッチンです。実際に使えます。
吊り戸棚を開けたらフライパンやお鍋もありました。ユニテに泊った後、千代田区立練成中学校(現在の3331 Arts Chiyoda)の一部を利用して開催された「ジャン・プルーヴェ展」や、森美術館で開催された「ル・コルビュジエ展」に行ったら、これとよく似たキャビネットが展示されていたのですが(もちろん「お手を触れないでください」の表示)、もしかしてジャン・プルーヴェのオリジナルだったのでしょうか。
コンロと、その下には電子レンジ。すぐ裏手に巨大スーパー(Géant Casino)がありますので、食材を買ってくれば調理できます。私はコーヒーを淹れて、スーパーで買ってきたデザートを食べただけでしたが。
その後、改装したということですので、今はオペレーションも良くなっているかも知れませんが、この頃は、ホテルとしてのサービスはまったくダメで、贔屓目に見ても中級のアパートメント・ホテルでした。
たとえばカフェのメニューも常に揃っているわけではなく、コーヒーしか用意できない朝があったり、ランドリーサービスはないのかと訊いたら、裏のスーパー内のクリーニング店に行って頼めという回答だったり…。
ところがこのクリーニング店、プレス不要と伝えたのに、ご丁寧にマシーンでプレスしてくれる困ったお店で、ZARAで買ったばかりのワークパンツのボタンがグニャグニャに溶けて台無しに、という忘れ難い思い出まで作ってくれました。
Hotel le Corbusier
http://www.hotellecorbusier.com/
[仕入れ担当]