先日、渋谷 Bunkamura 再オープン記念の一作「ミラノ、愛に生きる」をご紹介しましたが、もう一作が中国の時代劇「運命の子」です。
司馬遷「史記 趙世家」に基づいて京劇等で演じられてきた「赵氏孤儿(=趙氏の孤児)」の物語を、「さらば、わが愛 覇王別姫」の陳凱歌(Chen Kaige)監督が映画化したもの。
滅ぼされつつあった趙氏一族の妃から乳児を託された医者が、趙氏の遺児と取り違えられて自らの子どもを殺され、復讐を誓って趙氏の子どもを育て上げていくという恩讐の物語です。
まさに中国映画という感じの壮大な映像と、古典的なストーリー展開で、誰もが安心して楽しめる映画だと思います。
英題が Sacrifice となっていますが、いろいろな登場人物が、いろいろな理由で、何かの「犠牲」になっていきます。産んだばかりの子どもを遺そうと自ら命を絶つ荘姫も、誤解されて殺される医者の子どもも、そして終盤の展開に至るまで、重要な部分には犠牲の物語が入ってきます。
見どころは何と行っても、陳凱歌らしい完成度の高い映像でしょう。鮮明な映像だけでなく、凝りに凝った巨大なセットや、心情を反映した美しい衣装、そして出演者たちの緊張感のある演技。どれをとっても、さすが陳凱歌という感じの仕上がりです。
特に、序盤で命を絶つ荘姫を演じた范冰冰(Fan Bingbing)の美しさは、その衣装の素晴らしさもあって、登場時間の短さにかかわらず、とても印象に残りました。
また、成長過程の遺児を演じた子役、王翰(William Wang)の可愛らしさ。日本公開用のチラシやポスターで大きく扱われていて、日本人好みなのかも知れませんが、復讐を誓っていたはずの医者が、次第に子どもの命を心配するように変わっていく心情がよく理解できる可憐な少年です。
つまらないことですが、医者が「外でうまいものを食べさせる」という約束で、少年に言うことをきかせるシーンがあります。その旨いものというのが麺。天井から下げられた麺を箸で手繰り、鍋で湯がいて食べます。
先日観た「無言歌」でも、みんなが飢える中、監視役の偉い人は麺を食べていて、それを班長に薦めるシーンが出てきましたが、みんな麺が好きなんですね。
そんなことを考えながらBRUTUSの麺特集を見ていたら、急に麺が食べたくなってきました。
[仕入れ担当]