映画「人生万歳(Whatever Works)」

Whateverworks0 今月で休館してしまう恵比寿ガーデンシネマの最後の封切り作品となるようです。

ガーデンシネマというとウディ・アレン(Woody Allen)というイメージがあるらしく(個人的にはなぜかロバート・アルトマンのイメージが強いのですが)、今週末から始まるイベント「ベストセレクション」でも「マッチポイント(Match Point)」などがリストアップされています。

さて、この「人生万歳(Whatever Works)」ですが、とてもウディ・アレンらしい映画だと思いました。インテリで皮肉屋の主人公、ひねりのきいた軽妙なセリフ、NYの都会的な生活など、ウディ・アレン的な要素がふんだんに盛り込まれています。通算40作目ということで、原点回帰したのかも知れません。

主人公のボリスはノーベル賞にノミネートされたこともあるという自称・天才物理学者。飛び降り自殺に失敗した後遺症で片足を引きずる冴えない中年男ですが、仲間の学者たちと楽器を演奏したり、有料で子どもにチェスを教えたりして、それなりに暮らしています。

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ある日、南部から家出してきたメロディと知り合い、成り行きで家に泊めることになります。彼女は地元のビューティコンテストに出場しまくっていたという田舎娘で、無知で世間知らず。ボリスの厭世的な物言いを天才だからこそと勘違いし、尊敬と愛情を混同して結婚してしまいます。

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そこへ、メロディの母親マリエッタが訪ねてきて、ボリスの友人の哲学者と恋愛関係になり、彼女の写真を高く評価した哲学者が紹介したギャラリーオーナーとも恋愛関係になり、3人で暮らすようになります。下の写真はCafe Mogadorでシーシャを吸うマリエッタと哲学者ですが、服装もがらっと変わります。つまり、メロディがインテリ志向になったのと同様に、マリエッタも田舎の価値観を拭い捨て、アーティスト感覚で暮らすようになるのです。

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ちなみに、マリエッタはこの三角関係を"ménage à trois"と呼んでいましたが、この"三人家庭"というフランス語、wikipediaで調べてみたらいろいろな情報が載っていて勉強になりました。Whatever Worksという原題の通り、何でもありの多様な価値観が交錯する映画ですので随所に発見があります。

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この後、ボリスを嫌っているマリエッタが、メロディを違う相手と会わせたり、超保守的な(はずだった)父親が訪ねてきてドタバタを繰り広げたりしながら、ハッピーエンデイングを迎えます。終映後、「knishって食べたことある?」とか「SoHoのUniqloが出てたね」とか、楽しくおしゃべりできるコメディ映画ですので、安心してお友達を誘えると思います。

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まぁ、考えようによっては、南部蔑視というか、田舎をバカにしているというか、日本で同じようなことを言ったら非難されかねないセリフがたくさん出てきますが、米国では都会のインテリ層しか観ないと言われるウディ・アレン映画ですから、問題ないのでしょうね。共和党支持者や信心深い人の感想も、ちょっと聞いてみたいところです。

公式サイト
人生万歳Whatever Works

[仕入れ担当]