アメリカ版「Vogue」編集長、アナ・ウィンター(Anna Wintour)の日常を、1年で最も重要な9月号の準備段階から追ったドキュメンタリー。彼女の昔のアシスタントが著した「プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada)」の映画版では、メリル・ストリープ(Meryl Streep)が演じていた人(と言われている人)ですよね。
ちょっと気になる映画でしたので「一応、観ておこうかしら」ぐらいの気持ちで行ったのですが、東京では新宿のバルト9でしか上映されていないせいか、平日にもかかわらずほぼ満席。映画自体も、ドキュメンタリーとはいえ、ちゃんと盛り上がりもオチもあって、期待以上に楽しめました。ファッションに興味のある人なら、観ておいて損はない映画だと思います。
映画の面白さは、中心人物であるアナ・ウィンターと、それを取り巻くVogue編集部の人たち、ファッション関係者たちとの交流にあります。なかでも同誌のクリエイティブ・ディレクター、グレイス・コディントン(Grace Coddington)とのやりとりは常に刺激的で目を放せません。この方、映画の中ではとてもお茶目な印象なのですが、マリオ・テスティノ(Mario Testino)やパトリック・ディマシェリエ(Patrick DeMarchelier)といった大御所の写真家とずっと仕事をしていて、自身が関わった作品をまとめた「Grace: Thirty Years of Fashion at Vogue」という写真集まで出している方なんですね。
もちろんジャン=ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)やカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)、オスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar De la Renta)やヴェラ ウォン(Vera Wang)といったデザイナーたちも登場しますし、タクーン(Thakoon Panichgul)のエピソードの中で、GAPやMangoといった身近なブランドの話題も出てきます。
下の写真は、ファッションショーのスナップで、よくアナ・ウィンターの隣に座っているVogueのエディター、アンドレ・レオン・タリー(Andre Leon Talley)と。ファッション誌だからかも知れませんが、ものすごく女性が強い編集部の中で、唯一、彼だけが自分の意見を表明している男性でした。といっても、一般的にいう"男性"かどうかはわかりませんが……。
個人的に響いたのは、アナ・ウィンターと小売業者との朝食会で、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)のCEOが「売りたいときに商品が入荷しなくて困っている、デザイナーにもっと早くデリバリーするように言って欲しい」と頼んでいたシーン。そうなんですよね〜、秋冬の追加オーダー、何度、催促のメールを出したことやら……。いつ商品が届くのよ!とヤキモキしてるのは大手さんも一緒なんですね。
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ファッションが教えてくれること(The September Issue)
[仕入れ担当]